すり鉢ができるまで
■土ありきの石見焼
「土・炎・技」。
やきものの良し悪しを決める要素である。 なかでも、土・陶土はその根幹でありとても重要である。
その陶土「石見の粘土(都野津層)が石見地区にはあった。 しかも、日本でも類を見ない優れた陶土で何より高温に頼る粘土であることだ。 高い温度で焼けば焼くほど焼きものは硬さを備える。 すり鉢にとって「硬さ」は重要な要素の1つである。
弊社では、「石州瓦」製造業者向けに採掘中の粘土から、すり鉢に適した粘土を購入しています。 また、石見の粘土だけで焼くと、焼き上がりの素地はくすんだ灰色になるため、岐阜県多治見の粘土を混ぜて白さを補っています。
写真左:砕かれた粘土はタンク内で水と撹拌され、水簸、その後、濾過され不純物が取り除かれる。
写真右:フィルタープレス機と言う脱水機で粘土を絞る。元の粘土の80%ほどになる。
写真右:フィルタープレス機と言う脱水機で粘土を絞る。元の粘土の80%ほどになる。
写真左:多治見の粘土と合わせる。
写真右:粘土は土練機で空気を抜き(亀裂割れの原因)、すり鉢1個が送り出される。
写真右:粘土は土練機で空気を抜き(亀裂割れの原因)、すり鉢1個が送り出される。
■技術ありきの石見焼
日本のモノづくりが優れているのはなんといっても技術力です。
それは単に商品を作る技術ではなくそこに至るまでの製造機械であったり工具であったりシステムを作る力です。
限られた資金でいかに効率よく他がマネできないクオリティーをつくり出すかを考え、ろくろに設置した石膏型に粘土を入れ、回転する型にコテを押し付けて、粘土をすり鉢の形にする、この一連の流れを弊社独自で自動化に対応しました。粘土が鉢になるまでおよそ30秒です。
写真左:粘土を電動石膏型に入れ、ろくろが回転し、コテによって押し付けられる。
写真右:すり鉢形状が出来上がります。
写真右:すり鉢形状が出来上がります。
■目をかく
およそ10センチに満たない幅の櫛で、数回に分けてつけられる櫛目は最も重要です。弊社では極力段差をなくすことによって、押す、引く、右回し、左回し、どういう状態で使っても、引っ掛かりがなく、スムーズにすれるように製作しています。
写真左:一気に目をかく、約30秒足らずで完成
写真右:自作の櫛。各すり鉢の内側の丸みに合わせたテンプレート型を金属の板にあて切り出した物に目を立てる。
写真右:自作の櫛。各すり鉢の内側の丸みに合わせたテンプレート型を金属の板にあて切り出した物に目を立てる。
■釉薬をかける
色ムラをなくし1,300度の高温できれいに発色する釉薬の調合。 現代の製品作りに置いている村をなくすことは不可欠の要素である。
来待石を原料とする釉薬は、焼成温度「1300度前後」の幅がきわめて狭いため、窯の内部温度のムラにも敏感に反応して、でき上がりの商品の色に差がでる。そこで、色を安定させるために、弊社では、石州瓦の釉薬にも使われている赤茶の釉薬を高温焼成に最適な調合に変えて使用しています。
写真左:釉薬をかける自動施釉機。
写真右:釉薬のかかたった状態(乾燥後)
写真右:釉薬のかかたった状態(乾燥後)
■乾燥
工場の2階にて、約2週間乾燥します。すり鉢だけで通常日産1,000個、さらにおろし皿も加わり、繁忙期にはさらに工場は陶器で過密状態です。
■窯詰・窯出し
高温での焼成こそが石見焼の真骨頂です。置物、飾り物ではない、使ってこその道具。
1台の台車におよそ2000品。各鉢の底にアルミナ粉(くっつき防止)をつけて、隙間が出来ないように重ねて積み上げていく。焼成温度は1,310度。
窯詰
窯出し
窯から出すのは48時間後。(24時間炊き、24時間かけて除冷)
窯からだされてもまだ300度近くあり、最盛期の夏場は大変です。
窯から出すのは48時間後。(24時間炊き、24時間かけて除冷)
窯からだされてもまだ300度近くあり、最盛期の夏場は大変です。
■検品・荷造り・出荷
一つずつ検品・梱包され、全国に出荷されます。
※参照元:高本 壮、「すり鉢をつくる」、ふでばこ、32号、2015年11月、43-53ページ